岡林信康 「ロックコンサート 吉祥寺」

♪ いくらブタ箱の 臭いまずいメシが うまくなったところで
  うまくなったところで それで自由になったのかい
  それで自由になれたのかよ 
  あんたの言ってる自由なんて ブタ箱の中の自由さ
  俺達が欲しいのは ブタ箱の中での より良い生活なんかじゃないのさ
  新しい世界さ 新しい世界さ ♪
  (それで自由になったのかい)


 2010年5月6日(木)、岡林信康の「ロックコンサート 吉祥寺」へ行って来た。今回の参戦理由は2つ。

1.我が家に近く、神様が吉祥寺に来るのは初めてであること
・場所がスターパインズカフェで、我が家から徒歩5分強。これまで、日比谷野音(07年10月)、NHKホール(08年7月)、九段会館(09年6月)、文化放送(10年2月)など追っかけてきたが、今回はいわば神様の方から玄関先まで降臨される構図。
・さらに俄かには信じ難いような話であるが、フォークの歴史上、神様がフォークのメッカと言われた吉祥寺に来るのは初めて、の記念すべき日。

2.神様のロック回帰は夢であったこと
・長いエンヤトット時代に付き合い(耐え)ながら、「神様がもう一度普通のロックに戻ってくれないかなあ」、というのが長年の夢であった。その願いは、08年11月のタワーレコード渋谷のインストアライブ以来、九段会館や文化放送で一部実現した訳だが、今回は「全編ロックだけのライブ」!との触れ込みである。
・あれだけ望んだことが実現するのを、見届けない訳にはいかない。

 チケットは、4月4日に店頭でGET。12番。入場してすぐに2階の最前列中央を確保。1階の一番前で見ることもできるが、九段会館も文化放送もそれに近かった。「たまには離れて見たいもの<苦笑>」。ただし、この会場では、2階から見下ろしても、直線距離7~8mくらいか。

 一連のムーブメントの仕掛け人であるディスクユニオンの矢島氏を見かけたので「大復刻、有難う」と声をかけ握手。「今夜は楽しくなりますよ」とのことだったが、内容への期待と不安が過ぎる。

 19:37、赤い柄シャツに黒ベスト姿、手にはアコースティックギター、で神様登場。ギャグをかますことなく1曲目。「霧のハイウェイ」・・  (以下、後掲セットリスト参照)。

 印象的な発言を書き留めると、
(1曲終わったところで)
「今日は、14日からのZEPPツアーの小手調べ。3月にディランが前座を務めてくれた」。
(最後「虹の舟歌」へのエンヤーロッサ反応が良いことに反応し)
「もはやロックかエンヤトットか分らなくなっている。エンヤトットがこんなに浸透しているとは思わなかった。なぜもっと早く言ってくれないんだ。選曲を間違えたかも・・・」。
(最後に)
「40年間芸能界からリストラされ続け、しかしめげなかった」。

 全体として、上記参戦理由のうち、1の吉祥寺に来てくれライブハウスでの演奏を聴けたことは良かった。ただし、2の「全編ロックだけ」は、結果的に誇大広告だった。美空ひばりソングのロック化とアンコールでのエンヤトットのロック化まではぎりぎり許せるとしても、平野融と2名アコギによる演奏は、どう考えてもいつもの「弾き語りコーナー」であり「ロック」とは名乗れない。

 63歳にして全編ロックが疲れるのは分るが、どうせなら休憩を挟んででもコンセプトを貫徹して欲しかった。エレキギターを持つ手も有りかも。それと新しい曲(チャレンジ)が無かったのも残念。「あの曲も、この曲もやります」宣伝に、途中から「九段会館」+「文化放送」になかった曲のロック演奏を期待し続けたが、見事に「これは聴いたわ」のオンパレード。。。

 これもバックバンドとの練習時間等を含め、全編新曲という訳にいかないのは分るが、アルバム「金色のライオン」「誰ぞこの子に愛の手を」「街はステキなカーニバル」の中から「ゆがんだサングラス」「山辺に向かいて」など、今のフォーク・ロックスタイルに適した曲は幾らでもあるはず。また「それで自由になったのかい」が演れるなら、「私たちの望むものは」も解禁可能ではないだろうか。

 苦言も呈したが、もし復活後の岡林を初めて見る、というお客さんには、格好のライブであったことを付言しておく。是非ZEPPツアーが終わったら、また心機一転、変化し続ける岡林を期待し、見続けていきたい。


【セットリスト】
霧のハイウェイ
今日を越えて
血まみれ
自由への長い旅
マンハッタン
風の流れに
==ひばりコーナー=========
花笠道中
東京キッド
――弾き語りコーナー――――――
月の夜汽車
悲しき口笛
レクイエム
========
山谷ブルース
それで自由になったのかい
==アンコール============
虹の舟歌
あの娘と遠くまで

以上