春一番2002

 「春一番」に行って来た。大袈裟に言えば30年来の念願がかなった。春一番が華やかかりし頃は、田舎の中学生から高校生。拓郎・揚水が人気者で、「春一番」というのは、ちょっと、というか、大いにマイナーな集団のライブコンサートだった。ま、元々高石や岡林に代表されるフォークスター達に反発して、という動機もあったようなので、それも本望だったのかもしれない。

 後にライブレコードに触発されて、見に行きたいと思う頃には、春一番は終わっていた(第1期は‘71~79年に実施)。その後再開されたとは知っていたが、たった1回で終わった「第4回フォークジャンボリー」(東京)の2の舞になるような気もした。そもそも天王寺野音でなくては意味がないような喪失感もあった。しかし、どっこい年々盛況で、再開後7回目を迎えている。失礼ながら、いつまた終わってしまうかも分からない。今年は、一念発起。東京から駆けつけた。

1.5月4日(土)
―― 以下、詳細なセットリスト等はどなたかが出されるでしょうから、個人的な印象に沿い記述。

 服部緑地野外音楽堂である。最近、金森幸介の「緑地にて」「静かな音楽になった」の録音地としても、私には一度訪れてみたい場所となった。開始40分前に到着。約30mの待ち行列が出来ていて、11時の開演直前には100m以上になっていた。開場と開演が同時というか、トップバッターの演奏が始まってから入場するというのも、なかなか良い。

 トップの小谷美紗子から、ふちがみとふなと(行きの梅田駅から同じ車両に乗ったあまり小綺麗でない?2人組がそうでした)を経て、金延幸子(From USA)等を通り、若手のレゲエというかラップというか系ロックバンドへ。個別のファンらしき人々が多く、前に出てきて踊るので、最前列の私は視線を遮られる。

 しきりに、タンポポの綿毛が風に舞い、降り注ぐ。最初は誰かがシャボン玉と一緒に撒いているのではないかと思ったほどで、まるで舞台演出みたい。野外らしい良い気分だ。
 
 有山じゅんじ辺りがひとつのピーク。2曲目の前に突然、高田渡氏が舞台直前に駈け寄り、写真をパチリ。有山曰く「今日は雨が降ったら渡のギターを借りることになっていたけど、降ってないので自分のギターで弾けます」(笑)。その後ついに降り出した雨は遠藤ミチロウの辺りから強まり、肝心の友部も前に立って傘をさす人の合間から垣間見ることに・・。友部氏は、途中で2回もピックを落として詰まるなど、やや精彩を欠いた格好か。曲目は「眠り姫」「働く人」など最新作からが多かった(最後に「すばらしいさよなら」)。リクオの最後の歌も良かった。

 そして、いよいよ19時20分頃トリの大塚まさじ登場。チャールズ清水のピアノをバックに、「風のがっこう」「エピソード」「天王寺想い出通り」「プカプカ」。「プカプカ」がきたということは、と懸念したとおりアンコールはなかった(風太さんが「(19:55分だから)わかっとるやろー」と一言)。こうして、雨もあがり、春一番初体験は終わった。
 

2.5月5日(日)
 昨夜の雨が嘘のような晴天。待っている間にもジリジリと陽射しは暑く、持参したビールを2本とも空けてしまった(会場内にも500mlのスーパードライのみ売っている)。今日のトップバッターはアチャコ一座。昨日よりさらにド真中の最前列に席を占め、ステージを見てびっくり。昨日、目の前で汚いTシャツで最初から妙なタコ踊りを続けていた変わり者のおじさんが、派手な衣装に風船付けて歌っているではないか。人を見かけで判断してはいけません。

 早々にトイレへ。出たところでCD売り場をチェック。「こんにちは」と明るい声。顔を上げたら金延幸子さんでびっくり。「サインしますよ」ここで素直に1枚買っておけばよかったのだが、想定外の展開に思わず「全部持ってますから」「あら、皆さん持ってるのね」「昨日聴きました。明日もいらっしゃるんですか」「いえ今日帰るの」。席に戻り、やっぱ嘘はいかんな。折角だから最新作を1枚買おうと思っていたら、会場を去る彼女の姿が・・。ごめんなさい。もったいない事をしてしまいました。気を取り直してやはり入口で胡散無産を売っていた方に「あがったさんですか」(ニフティのフォーラム以来、私と殆ど感性が同じ書き込みで感心していた方)と話し掛け、最新号を1冊購入。薄いけど内容の詰まった雑誌でした。

 今日は、昨日比、落ち着いた弾き語りが多い。いとうたかお、シバといった辺りは、やはり研ぎ澄まされたものや貫禄を感じさせるステージ。ファンも座って熱心に聴く姿。波人(朴保)がペンノレ(岡林で有名になった韓国民謡)等で「立つ」よう強要したのは頂けないが、それにしても(余計なお世話だが)喜納昌吉に間違われないのだろうか?

 そして圧巻は、やはり加川良。風太さんが「ジャパンが生んだスター」と紹介。音量等の調整に4分を費やし、「高知」「かかしのブルース」ときて「教訓」。皆が自然と唱和する。で風太さん「加川良でした」エッ3曲だけ?と思ったら「春一番でアンコールもろうたことがないんで、今日は予め用意しました」と、新曲へ。タイトルは不明ながら「若い頃はただそれだけで・・」と始まり「産まれた時から僕達は、滅び行く道の上にいる」「・・滅び行く道に花を飾る」「・・滅び行く道を歩いてる」と歌って、団塊世代のおじさん達をノックアウト。唯一本気のアンコールの拍手鳴り止まず、酔ったファンと殆どケンカ寸前まで高まったが、阿部のぼるさんの「アルコールは受け付けません」の絶妙のボケで、見事に収束した。
 
 酔っ払いといえば、この辺りから、盛んに周囲に握手を求め、抱きついたりしながらステージ前を往復するおっさん1名。ついには、ズボンを下ろしパンツを見せたりしていたが、ステージ袖でダウン。この方も、一見浮浪者にしか見えない(失礼!)感じだが、常連で「あのおっさんが来ると春一番がうまく行く」(阿部さん)のだという。補虫網を持った子供や、幼児、赤ちゃんの類も多く、しょっちゅうステージ前を往来するのだが、酔っ払いと交錯し、これも春一番ならでは、のおおらかさか・・。私は正直ハラハラしたが・・。
 
 さらなる驚きは、押尾コータローなる新星の登場。名前しか知らなかったが、ギターのテクニックは驚嘆すべきもので、殆ど曲芸・大道芸としても成功しそうなフォーク?界の氷川きよし。ギター1本でドラムやエレキも再現し、「ウルトラマンの歌」や「戦場のメリークリスマス」を演奏していた。私は急ぎCDを買いに走った。唯一拍手しなかったのは、真正面で見ていた中川イサト氏。師匠だという。シバと一緒に最前列から写真を撮りまくっていた。そしてトリは中川イサト。ザ・バンドの「ザ・ウェイト」などをしっとりと演奏し、最後に弟子の押尾と「その気になれば」をデュエットして幕となった。
 
(まとめと教訓)
 最終日は仕事の都合でパスした(高田渡と石田長生くらいしかめぼしい人が出ないのも難)が、多くの歌が聴けて満足。1日9時間弱で3500円は安い。演奏者交代時のセッティング等も見事で、勉強になる。なにより福岡風太さんや阿部のぼるさんの人徳や若いボランティア諸君の努力も大きい。ウメちゃんなるセッティングの統率者も格好良かった。天気さえ良ければ気持ちも良い(両腕を火傷したが・・)。大阪方面に住んでいる方は、絶対行って損はないと思う。

 本当は、金森幸介、斉藤哲夫、豊田勇造、オクノ修、早川義夫、佐渡山豊といった面々も加わると最強ですけどね(岡林や拓郎を、とは言わないが、路線が微妙に違うのだろうか??)


以上