どこへ行ったか陣太鼓


 どこへ行ったか「陣太鼓」。飯田橋でも4丁目。目白通りの7番地。24時間休みなし。

 長―いテーブル真ん中座り、朝は定食食べに行く。大学行ったら朝まで長い。遅い時には2時3時。するとまたまた陣太鼓。春菊玉葱2種類だけの、野菜かき揚さくっと揚げて、黒いスープのおそばの上に、どっかとのっけてねぎぱらり。「うまい」と一言思わず言うと、兄ちゃんコロッケオマケでくれる。
 かき揚げくるりと回転させりゃ、つゆの表面油が浮くよ。麺はふにょっとうどん粉麺で、全く自分を主張せぬ。思えば父ちゃん靖国帰り、「お前いつでも何食べる?」そこで来たのも陣太鼓。父ちゃんタブーのうどんを食べた。
 店長「息子はホステス連れて夜食を食べにやって来る」父ちゃん僕の目も見ずに、「赤ちゃんできたらどうする」だとさ。店長冗談やめとくれ。親父にゃ冗談通じない。ホステスなんかじゃないでしょう。深夜になれば外人さんが、片言日本語押しかけて。グランドパレスは常連さんだ。そこで生まれる国際親善。箸はこう持つ教えてあげた。百円三枚おつりも来るよ。

 どこへ行ったか陣太鼓。ああ懐かしや陣太鼓。
 あの日の仲間はみな消えた。彼女も名古屋へ行っちゃった。地上げをされたL字型。ぺんぺん草も生えてこぬ。捨てられ悲しや陣太鼓。忘られ悲しや陣太鼓。「軽い心」も「駒忠」も「すぱ小家」「ポップス」みな消えた。再開発でビル建てて古い思い出消していく…。

 

 お前が いなくなってから淋しくなったぜこの街も 
   一人歩きもいいけれど 夜は寒いぜお前がいなきゃ
 急に姿を 消したから 俺はあわてて捜したさ
   あの娘は死んだと街の噂 馬鹿を言うなと どなってやった
 あれから何年経ったのか 昔の仲間も 少なくなった
   俺ときたら相変らずで 今も気ままな街暮し

 本当は愛していたんだぜ 口に出すのが 照れくさくって
   本気にしないだろうけど 今でも心は昔のまゝさ

 お前がいなくなってから 淋しくなったぜ この街も
   一人歩きもいいけれど 夜は寒いぜお前がいなきゃ