2014

朝五時に家を出て、宮城県の多賀城まで行ってきた。
仙台駅でやまびこを降り、東北本線に乗り換える。下車する時は自分でドアを開けるというルールに戸惑いながら、
午前九時に国府多賀城駅に降り立つ。
行こう行こうと思いながら、ずっと行けずにいた感動。
政庁跡に広がる土塁、空堀、階段…。「復元」と称する余分な偽物建造物がないから、想像できて実に楽しい。
続いて多賀城廃寺跡に向かって歩いていると、明らかに東日本大震災後に建ったと思われる仮設住宅を目にした。
虚ろな表情のやせ細ったお婆ちゃんが一人、ぼんやりと通りを歩く人を見ている。急ごしらえで断熱材も使われて
ないから、極端に暑かったり寒かったりする。家具があると寝られないくらい狭い。結露がひどくてカビだらけ。
遮音性が悪く、プライバシーもない。コミュニティー不足で孤独死も起きている。
二年以上経って、そもそも長く住むことを想定していないから、あちこちでガタが来ている。
仮設住宅で暮らす多くの人々。
五輪開催費は七千三百四十億。それとは別に、鉄道、道路の整備費が六千三百九十二億円。税金がいくら使われるのか。
本当にそれで良かったのか。
百年で三度も巨大地震に襲われた東北。それなのに不完全な堤防で人々を安心させてしまったとしたら人災、国の責任といえる。
あのお婆ちゃんの悲しげな表情が頭から離れない。

雁屋哲さんの『美味しんぼ』の休載が決まった。
いろんな圧力がかかった結果である。福島に住む人が風評被害で困るということである。鼻血が出る、というのは放
射能だけが原因ではないし、ありうる話だ。あの長い窮屈な仮設暮らしなら、病気になる高齢者も多いだろう。
雁屋さんは真剣に福島を心配していたんだろうと思う。それがうまく伝わらなくて残念だ。
加須市に住む福島なまりの避難民の老人が買い物に出た時に「あんたらたくさんお金もらってるんだろう」と言わ
れ、外出できなくなったと新聞にあった。
口さがない人はどこにでもいるものだ。
首相の「福島原発事故を完全にコントロールしている」。汚染水は外に流れ続けてるんでしょ(本当は)?関東東北
は人の住めない所になったかもしれないんでしょ?隠そうとしてたけど。地震大国日本でなんで原発だったの。天災
なくともテロだってありうるよね。廃棄物の処理場も決まってない。お金を出してモンゴルに埋めればいい、なんて
どうして言うのさ。
かく言う自分自身が原発を持つ町で生まれた。
帰省する時は国道378号線を南下する。
だんだん発電所のドームが近づいて来る。
誘致の際は町が真っ二つに分かれ、離婚や暴力や自殺…いろんな悲しいことが起きた。
その時のしこりはまだ住民間に根深く残っている。
種を明かせば原発のお陰で実に多くのお金が町に下りた。
がらんとした夜間照明のついたテニスコートは使い放題だ。
スポーツセンターのプールは都内の高級ジムにもひけをとらない豪華さだ。原発マネーは身の丈に合っていない立派
すぎる箱物と道路を生み出した。それは「鳥も通わぬ岬十三里」と言われた貧しい町が生き残るための選択だった。
金の下りない隣の二つの町は予算不足で町長自らごみの収集までしていたが、原発の町に吸収合併され、名前も消え
た…


 暑い夏がそこまで来てる みんなが海へくり出していく
 人気のない所で泳いだら 原子力発電所が建っていた
 さっぱりわかんねえ、何のため? 狭い日本のサマータイム・ブルース

 熱い炎が先っちょまで出てる 東海地震もそこまで来てる
 だけどもまだまだ増えていく 原子力発電所が建っていく
 さっぱりわかんねえ、誰のため? 狭い日本のサマータイム・ブルース

 寒い冬がそこまで来てる あんたもこのごろ抜け毛が多い (悪かったな、何だよ)
 それでもテレビは言っている 「日本の原発は安全です」
 さっぱりわかんねえ、根拠がねえ これが最後のサマータイム・ブルース