十代の頃


 十代の頃ってすぐ天狗になったり挑戦的になったり。かと思うと、翌日にはケロリと、ならいいが、急に鬱になって閉じこもることも。そんな時代、深夜放送で必死になって歌詞を写したのがキヨシローの曲だった。

 ジュギョウヲサボッテヒノアタルバショニイタンダヨネコロンデイタノサオクジョウデ…

 歌詞が呪文のように朝になっても離れない。屋上からは五月の海が見えるかもしれない。五時限目の前、僕は喧騒な廊下を逃れ、三階から暗い上り階段へ。
 屋上へは一枚の錆び付いた重いドア。それを「立入禁止」の張り紙とともにゆっくり押すと、ギイイと唸った。眩しい。空中庭園には、既に常連らしい先輩たちが転がって煙草の噴煙を上げる。その視線から逃げるようにして屋上の隅っこへ。

やっぱり見えた。遠くどこまでも横長く光る点描画のような瀬戸の海。まばゆい空には飛び散った綿毛の雲。白い道を従えて、川は空の青さを映し、くねくねと海へ。レンゲやタンポポの残るなだらかな田畑の起伏も、まだ先に透き通る淡い緑の木々も、壁の落ちた家も、すべてが初夏の気配で呼吸している。こうして見ていると、未来への思いが膨らんでくる。
 ぽん、と肩をたたいたのは、中学の同級生だったソガベだ。生徒会長だった彼の卒業式の答辞は素晴らしかったな。「卒業なんかしたくありません」と言い放った時には、みんな号泣したものだ。校長先生が顔をくしゃくしゃにしてハンカチを渡したシーンが浮かんでくる。「何見てるんだ?」「一本どうだ。」「五月だな」初めて吸うハイライトで頭はくらっとする。煙がするするっと空に上がっていく。
 「おい、そこにいる奴、何してるんだ!」僕らは振り向く。甘えは許されない。以来、五月の風にはパセティックな鉄拳の思い出が加わることとなる。

 

WOO 授業をサボッて陽のあたる場所に いたんだよ
 寝ころんでたのさ 屋上でたばこのけむり とても青くて

内ポケットに いつもトランジスタ・ラジオ
 彼女 教科書 ひろげてるときホットなナンバー 空にとけてった

ああ こんな気持うまく言えたことがない ない

ベイ・エリアから リバプールからこのアンテナが キャッチしたナンバー
 彼女 教科書 ひろげてるときホットなメッセージ 空にとけてった

授業中 あくびしてたら口がでっかく なっちまった
 居眠りばかり してたら もう目が小さく なっちまった

ああ こんな気持うまく言えたことがない ない

Ah 君の知らない メロディー聞いたことのない ヒット曲
 Ah 君の知らない メロディー聞いたことのない ヒット曲