岡林信康ライブ「狂い咲き2007」 36年後、あの世で会おう

♪さても日比谷の皆様よ
やって来ました御歌囃子
何のご縁か今日ここに
会えて嬉しや騒ぎましょ
時は過ぎゆく流れゆく
今日という日は二度とない
咲いて散るのが花ならば
今日と言う日を咲かせましょ

スチャラカ歌いましょ
あなたの町で
スチャラカ踊りましょ
あなたの村で♪

(スチャラカ!)


本人は写ってません。悪しからず。

 

2007年10月20日(土)岡林、改め、御歌囃子信康36年ぶりの「狂い咲き2007」(日比谷野外大音楽堂)へ行って来た(岡林のアルバム解説は「人物編」参照)。同行者はまたも管理人H氏。フォークの神様、一念発起・一世一代、最後の?晴れステージを見届けない訳には行かない、と覚悟の参戦である。
 
なかなか、いや、非常に良かった。昔フォークの神様にして、今やエンヤトット教祖による「御歌囃子」は完成の域に近付いていた。いや、もしかしたら完成したのかも。その前向きな決意表明を意気に感じ、人生観に感銘も受けた。私はふっきれた。岡林さん、私、認めます。あなたは、自らの信じたその道を進んでゆけば良い。もう「フォーク・ロックに戻って欲しい」などとファンの我が侭を言うのは止します。
 
声が一層甘く、儚く、優しく、切なく、力強い。要するに歌が上手い!。そして、ご本人が言うとおり「相変わらずしゃべりは上手いネエ」だ。冗談混じりで皮肉・諧謔のような、高めておいて落とすお馴染みのトーク(以下に極力再現)は故・高田渡の芸域に達し、かつ人生へのメッセージ性に満ち溢れている。平野融のサイドギターも、かつての中川イサト並みに素晴らしいし、バックの笛・太鼓陣も、どれも音が「決まって」いる。
 
17:07、ほぼ満席近くまで埋まった会場のステージに神様登場。会場からの「かっこいい」の掛け声を受けて、第一声は「かっこいい?この革ジャン、2万7千円ですからね」との意表を突くお言葉。

【1曲目:スチャラカ!】
1曲目から(冒頭に引用した)新曲!だ。「スチャラカチャン スチャラカ・スチャラカチャン」は、植木等的な楽しいサビ。
「あれから36年、岡林は死ななかったし、皆さんも生き延びて、今日こうしてここに辿り着けた。互いに褒め称えあいましょう」
「コンサートと言うより、嫌われ者、変わり者、鼻つまみ者の吹き溜まり、全国奇人変人大集合だ」
「エンヤトットだけでなく、ギター生演奏もやります。ご安心ください。ちゃんとわきまえております」<これには爆笑と大拍手>
「観客の高齢化問題が深刻だ。次回はパンパースが必要になる。ボロボロガタガタになろうが頑張りたい。今日はリラックスして行きましょう」

【2曲目:エンヤトットで行きまSHOW】

【3曲目:酒持ってこい】
「今やっているエンヤトット・スタイルを作り上げるのに25年かかった。歌手としてのキャリアを殆どこれにぶち込んだ。日本土着のリズム、盆踊りとか、日本独自のダンス・ミュージックの追求に苦戦していた時、韓国のサムルノリに出会って開眼した」

【4曲目:風の海峡】
「サムルノリに捧げる歌」です。
「この出会いがなかったら、今頃ナツメロフォーク歌手として御殿を建てていたでしょう」<笑>

【5曲目:江州音頭物語】
「この歌は長い。途中で手拍子が少なくなると悲惨なので、合図するから」
「何の前提知識も持たずに来た方は、今頃、さぞやボーゼンとしておられることだろう」<爆笑>

【6曲目:あらえさっさ!!】
「女性の強さ、えげつなさ、残忍さ、見境の無さ、を表現した歌」

【7曲目:御歌囃子ソーラン】
「現在のスタイルは、フォーク・ファンには評判が悪いが、他の筋では評価されているんだ<笑>。札幌のYOSAKOIソーラン祭り事務局から歌を作って欲しいと言われ作った。これをバックに踊ってみたい、というチームが一つも無かった・・・。現実と言うものはそんなものだ」

********** ここで、「高齢者トイレ対策&CD売り上げ促進休憩20分間 **********



ここから、ファンの大半が期待のフォーク弾き語りスタイルで、

【8曲目:山辺に向かいて】
亡き親友のカメラマン=川仁忍が病床で「最高作品」と誉めたとされ、本HPのT's Selectionでも選んだ名曲

【9曲目:山谷ブルース】
例によって(御歌囃子ライブレポ参照)歌い出して直ぐに中断し、拍手を強要。神様、案外、この歌をストレートに歌うことが照れくさいのではないか、と気付いた。それは36年前に「友よ」を自らちゃかしたのと似ている。

【10曲目:チューリップのアップリケ】
観客のどよめきと(自主的な)拍手は、この辺りが最高潮。
「歌い出して40年経ちます。このコンサートを40周年記念、と銘打っても良かったんだけど、来年、文化放送主催で武道館でやりたいな」<笑>
「影響を受けた人が3人(組)います。
(1)高石ともや・・・「この程度なら俺もやれる」と思った<笑>
(2)サムルノリ・・・自分たち固有のリズムを信じて楽しんでいる
(3)ボブ・ディラン・・・変化して行くのがスゴイ。その時々の自分に相応しい表現スタイルを採って良いことを教えてくれた。ただし、ディランと岡林の「決定的な違い」が一つだけある。それは、スタイルを変える度にファンを失って行った・・・ことです」<爆笑>

【11曲目:今日を越えて】
「はっぴいえんど、と組んで人気を失うきっかけとなった曲です」
平野融のサイドギターが大変上手く、効いている。

【12曲目:自由への長い旅】
中島みゆきが、昔、フォークNo.1ソングとして推していた曲だ。
「36年前の狂い咲きコンサート後、田舎へ引っ込み、人と自然との関係をモルモットとして探求した。右だ左だ、体制・反体制はどうでも良いと思った」
「しかし、今静かに振り返ってみると、あれはまさしく引き篭もりだった」
「二十歳そこそこで神様になるとキツイですよ」
「5年間、米粒一つ買うことなく暮らせて、2年間はギターに触らなかった」
「しかし、ギターを捨てなかったのは、やはり多少の未練があったんでしょうね」

【13曲目:26ばんめの秋】
「そして、2年ぶりにギターを手にした時、これまでの自分とは全然違う曲が出来上がった」
「春の若葉が青く茂り、赤くなって落ち、冬は雪に覆われても、土の中からまた芽吹く。四季の流れの中に身を置いていると、丁度母親が55歳で胃がんになって・・、人は生まれて死んで行く。それは悪いことじゃないんだな、と。その時の気持ちにしっくりくるのは、決してロックンロールじゃなかった」
「自分でもマズイと思うほど演歌が好きになった。美空ひばりさんも歌ってくれた。あの人の歌は完璧だ。しかし、歌と言うものは、上手ければ良いというものではない!<笑>。プロとして、上手いと感じさせるようでは未熟だ、と言う美空ひばり。下手で悩む凡人。そして、上手い・下手が通用しない『味』で勝負するのが神様・岡林だあ~!!」<大拍手>

【14曲目:春を運ぶな雪の海】

【15曲目:上林小学校校歌】

【16曲目:流れ者】

********** ここから、再びエンヤトット・オーケストラで **********

【17曲目:全ては恵みの雨となって】

【18曲目:陽炎情話】
「私の力では、とてもこんなに人を集められなかった。文化放送様のお陰です(謙遜ですけど)。日比谷野音で、と言われた時、『時期尚早では』と答えたら『自分の歳を考えなさい。死んじゃいますよ』と怒られた。確かに60過ぎて時期尚早もヘッタクレあるもんか、だわ」
「しかし、これで文化放送には、『社会的責任』というものが生じた。もう来年、武道館公演を実現するしかない」
「去年還暦、2年前には孫も出来た。同年代は競馬に喩えて『第3コーナーを曲がった』と言う奴、『バックストレートを走っている』と言う奴、『もう終わったよ。後は余生だ』という奴、いろいろだ」
「しかし、私は何も始まっていない。漸く準備段階が終わってこれから何が始まるか、という段階だ」
「かの葛飾北斎は、90歳で、『自分の70歳までの作品は取るに足りない、ごみだ。漸く絵と言うものが少し分かってきた』と言っている」
「こんな、と言っちゃなんですが、コンサートは、ただの出発点に過ぎない。私の目にははっきり見えているんです。武道館の向こうにあるNYはMSG、LDNはロイヤル・・・。殆ど誇大妄想狂だ」<笑>
「実現する日まで、みんな元気で生き延びて、パンパースを忘れずに集まろう」<大拍手>

【19曲目:虹の舟歌】
「(フェイドアウトしながら)かくして私たちの船は沈んで行くのです。しかし、何のために沈むのか。沈まなければ浮かび上がれない!」と再盛り上げ。

********** アンコール **********

「さあ、立つのだ。もはやこれはコンサートではない。新興宗教大会なのだ」
20曲目【今夜は朝まで踊りましょ】

21曲目【らっせーら!!】
最後の方は「ええじゃないか、ええじゃないか、ヨイヨイヨイヨイ」の繰返しで大盛り上がり。
そして、20:16、神様、決め文句「36年後、あの世で逢おう」でお開き。

♪春に浮かれてさあ踊りましょう 桜の木の下で
 踊り踊ればウキウキワクワク 力も湧いてくる
 つらい涙が溢れる時も歩いて行きましょう
 何があっても花咲くための恵みの雨だから
 重たい雪にうなだれていた梢も今は花びら溢れ
 桜吹雪を降らせているよ
 ちょいと踊りましょう♪
 (全ては恵みの雨となって)

選曲では、「友よ」「手紙」が歌われないのは、諸般の事情からやむを得ないとして、欲を言えば「申し訳ないが気分がいい」「ラブソング」「みのり」「私たちの望むものは」「君に捧げるラブソング」辺りを(校歌の代わりに)入れてくれると、有難かったような気もする。が、贅沢というもんですよね。

会場では、加藤和彦氏ほか有名人も見かけたが、結局ゲストは出なかった。どうせ出るなら吉田拓郎クラスでないと面白くないが、今や心身ともにダウン中。高田渡は逝去したし、ここは意気軒昂な岡林神様に頑張ってもらおう。

なお、会場では、御歌囃子になってからの自主制作CDと本が売られていた。
私は、当日発売の新作「岡林信康ベストコレクション 歌祭り3」と、(同1、2、3と同じ音源と知りつつも)お布施として「御歌囃子参上!!エンヤトット・ミュージック・ベストコレクション」の2枚を購入。なかなか、良いゾ。

行けなかった皆さん、そして全国フォークファン諸兄にも大丈夫、の朗報です。
この「狂い咲き」の模様、なんと早速、以下の通り放送予定。
  ●ラジオ=文化放送 11月23日(祝)11:00~12:55
  ●テレビ=NHK・BS2 11月30日(金)22:30~0:00
果たして、紅白歌合戦への道はあるのか!?

本人が語る「35年振りの日比谷」はこちら