加川良ライブレポート ~ 丸くなったか、優しさと魂の歌たち

 ♪ 窓から抛り出せるものは すべて昨日捨てました
   始めようというでなく終わりにしようというでなく 
    左か右かと尋ねられ みっともないとも言われ
   噛み付いてまでしがみ付くなんて 全く時間を無駄にした
    ペンを握っていると 答えてみろとも言われたが
   所詮あんたとこの俺じゃ 足の文数だって違う
    ああきっと今に風向き変わる 事情なんて何もない
   ほら揺れている 見えてくる
   私は私の気に入るように ♪(つれづれなるままに)

 加川良の「クリスマスライブ」(04.12.24:下北沢ラ・カーニャ)に行って来た。
 今回は、若いWさんとの素敵なクリスマス・イブ・ナイト!?


1.第1部 = 聖歌
  2番目に並んで陣取ったのは、ステージの直ぐ左脇、というより、ステージ上!2m先には加川良さん。「第一部は聖歌」との言葉と共に、マーティンのオールドD-18で歌い出されたのは、<つれづれなるままに>。いきなりの愛唱歌に内心喜ぶ。そのまま、<東京>に入り、いきなり3番の歌詞が出て来ない。私を含む会場の後押しで漸く何とか歌い終える。<あの天国とやらへ><泉への道:仮><鎮静剤>。そして「ゴスペルですから」と歌われたのは、小坂忠の名曲<機関車>。イントロのコードを弾きながら、「ん?こうだっか?違う・・」と呟くこと数度。「どれも同じですから」と。確かに、G-Em-D-C-Gの循環コードが多い。

  懐かしの<百円札>と歌い継いで、「いやあ、かなり歌った。1時間経ったかな、今どのくらい?」。私が思わず正確に「25分です」と答えてしまうと、「え、あんなに歌ったのに?そうかー・・」と継続。<枚方のあきちゃん><小さな宇宙の横に>、そしてこれも我が愛唱歌<流行歌>。

  これで「汗もかいてないけど、ほんの数分、飲み物タイムということで、楽しんでください」と第1部終了。丁度10曲、40分。なんだか、親類・友人向けにリハーサルをこなした感じ。

2.第2部 = 懺悔
  20:25分、舞い戻って、ヤマハの装飾入りギターを手に、白いジャンパーを脱いでオレンジのTシャツ姿となる。マイクもスタンディングポジション(第1部は椅子に座ったままだった)。「第2部のテーマは懺悔です」として歌いだしたのは、<女の証し>。

  <こがらしえれじい>へ突入し喝采を浴びるも、途中で歌詞を忘れまくり、会場もいい加減な助言をするので、はちゃめちゃ。「最初からやり直そう」と、渾身の名曲<贈りもの>、<祈り>。いきなり「もう歌う歌が残ってないな。リクエストください。何でも出来ます」との呼びかけ。最初は誰からも声が出ず「君におやすみ」か「ビールストリート」でも頼もうかな、と思った辺りで<こもりうた>そして<下宿屋>と応える。ぶっきらぼうに端折って歌ったけど、良かった!加古川や滋賀、香川などから方もおり、「こんばんはお月さん」、とか、「フォークシンガー」の声もかかる中、「みんなやっぱりあの頃の歌が好きなんですかね」と少し不満そう。<高知>までリクエストに応えた後、「私の世界に戻ってみようかな」と<あした天気になあれ>(世界は変わらん?)そしてご自身が歌いたかった世界であろう<幸せそうな人たち><ONE>またも10曲、40分 。

3.アンコール
 中越地震被災者へのチャリティーとして、良さんのTシャツやCDなどが用意されていたが、段取り力が不足しており、ご本人が「欲しい人に持って行ってもらおか」とかのたまうため、混迷。私自身は、やや呆れ一旦諦めた後、追加で出て来た「USED:Tシャツ」を1枚ゲット。
  そして、やけくそ気味に?明るい大合唱の<胸にあふれるこの想い>、思いがけずと言うべきか、サービス精神というべきかの<教訓Ⅰ>と2曲のアンコールが続いて、ジ・エンド。

4.全体の印象
 今回のライブは、Wさんにとっては「初心者に優しいライブでした。好きになれそう」とのこと。私としては、沢山の曲、特に好きな曲=名曲?を聴けたのは収穫。全体に「やぁ。」に表現された親しみ易い、等身大の良さんが見られたとは思える。
 ただ、仲間内の余興的なイメージもあり、くだけていても良いのだが、歌を覚えていなかったり、段取り力がない(次に何を歌うか決めていない)辺りは難点か。陽水「空想ハイウェイ」出演時に見られた気弱さ、周りへの気遣いも感じられた。
 かつての加川さんには、もっと取っ付き難いような緊張感、こだわりがあったような気がする。「丸くなった」ということなんだろうか。聴衆(ファン)と協調して頂けることに感謝しつつも、フォーク界の純潔者?として、さらに深淵を追求して行って頂きたい(求道者のイメージ)、そして「優しさと魂の歌」達に磨きをかけて欲しいと望む感もあるのが、誠にに勝手ながら、・・正直なところ。

♪ 若い頃は ただそれだけで すべてのことが許されて
   過ちさえも美しく    我が儘であればあるほどに
   幸せそうな人たちが   12月の灯りの下にいる
   生まれた時から僕たちは 滅びてゆく道の上にいる
  生まれた時から僕たちは 滅びてゆく道を歩いてる ♪(幸せそうな人たち)

5.補足
  翌25日岡林信康のクリスマスライブ「響け渋谷に~御歌囃子(おかばやし)」があることが分かった。が、流石に急過ぎて断念。
  折りしも当方、過去の岡林出演ビデオ「青春プレイバック」「11PM」「今夜は最高」「2人のビッグショー」「驚きももの木20世紀」などのDVD化作業中。
  神様のライブ情報がより広く早く行き渡る体制整備(岡林公式HPの復活なのか、本HPの奮闘か)を望みたい。

6.付録
  新年に当たり、去年のベスト5でも選ぼうかと思って振り返ってみた。1年で66枚(うち邦楽41枚)のアルバムを買った(前年比半減)が、なんと新譜は8枚のみ。それも「高田渡トリビュート」遠藤賢司「純音楽一代」加川良「USED2」金森幸介「ライブvol2」といったラインナップは、新譜とは言い難い感もある。中川五郎さんの新譜「ぼくが死んでこの世を去る日」も歌自体は昔から聴いていた。日本フォーク界には少し淋しい年だったのかも知れない。
  結局、小室等BOXにより「ライブ'74:デットヒート」が再発されたのが最良の出来事だったのだろうか。今年こそは、私自身も日本フォークを、さらに厳選して買いたいと思っている。

以  上